中国共産党の影響力工作 CSISレポート「China’s Influence in Japan」（３）
１．日本に影響を与える中国の戦術（China’s Tactics to Influence Japan）
世界中で、中国の影響力キャンペーンは、中国を世界の大国の中で正当なグローバルリーダーとして紹介しようとしてきた。日本に影響を与えることになると、中国は日本社会にポジティブなイメージを醸成し、エリートの間で同盟を築き、日本のビジネスチャンスや投資（技術ノウハウへのアクセスと並んで）へのアクセスを切り開くことを目指してきた。
最近のドイツ・マーシャル基金の報告書によると、中国が日常的に世界各地で使用している戦術には、中国経済の武器化（経済的強制）、物語的優位性の主張（プロパガンダとディスインフォメーション）、エリートの仲介者への依存、中国のディアスポラの道具化、権威主義的支配の埋め込み(注6)などがある。
*1
これらの戦術の多くは、日本との交流の中で見られる。本稿では、良性の影響力（公共外交）と悪性の影響力（「3つのC」（隠密covert、強制coercive、腐敗corruptの3つのC）に該当する活動）の両方を探求する(注7)。
その目標として、中国は日本をBRIやアジアインフラ投資銀行（AIIB）のような中国のグローバルなイニシアティブに参加させ、世界における中国の正統性を高めたいと考えている。複数の専門家によると、日本の主要な安全保障上の懸念は、東京とワシントンに対する不満もあり、沖縄が独立を宣言する可能性である。中国は、米軍基地に近い島の北部への外交、ディスインフォメーション、投資を通じて、この目的を後押ししている。両国は、世界平均よりも貿易依存度（GDP に占める貿易の割合）が低いにもかかわらず、お互いのトップ貿易相手国の中にあり、共依存関係を生み出している(注8) 。2018年UNCTADのデータによると、日本は中国の第3位の輸出市場を代表しており、中国は日本の最大の輸出市場である(注9)。地政学的なレベルでは、中国当局者の中には、米国との同盟関係から距離を置く日本を構想しており、国連安全保障理事会の日本の常任理事国入りを支持する可能性もある(注10)。
中国の影響力目標は常に悪意があるわけではなく、むしろ中国の国益を促進しようとするものであり、日本を犠牲にすることもあれば、そうでないこともある。
つづく
*1:注6．マット・シュレーダー「友と敵。デモクラティック国における中国の政治干渉を理解するためのフレームワーク」（ドイツ・マーシャル基金）2020 年 4 月 22 日。https://securingdemocracy.gmfus.org/friends-and-enemies-a-framework-for-understanding-chinese-political-interference-in-democratic-countries/.
*2:注7．「3つのC」は、2017年にオーストラリアのマルコム・ターンブル首相が行った演説に由来する。Malcom Turn-bull, "Speech introducing the National Security Legislation Amendment (Espionage and Foreign Influence) Bill 2017"(スピーチ、2017年12月7日)。
*3:注8．“Trade (% of GDP),” World Bank, https://data.worldbank.org/indicator/NE.TRD.GNFS.ZS?most_recent_value_desc=false.
*4:注9．”General Profile: China,” United Nations Conference on Trade and Development (UNCTAD) STAT, 2018, http://unctad-unctad.org/countryprofile/generalprofile/en-gb/156/index.html; and “General Profile: Japan,” UNCTADSTAT, 2018, http://unctadstat.unctad.org/countryprofile/generalprofile/en-gb/392/index.html.
*5:注10．アルフレッド・チャン「中国建国期の若きトルコ人。劉雅州出版の軍記」『Jamestown Foundation』チャイナ・ブリーフ5号19号2005年9月13日。http://jamestown.org/program/a-young-turk-in-chinas-estab- lishment-the-military-writings-of-liu-yazhou/.
